過去と現在ときどき未来

過去と現在ときどき未来について感じたことを感じたままに

なぜか記憶に残っている会話 -高校の物理の非常勤講師

スピーチや会話の中で記憶に残っているフレーズや内容って、いくつかあると思う。

担任の先生、部活の先輩や先生、職場の先輩や上司、または友人たちとの話の中で記憶に残っている会話。その後の自分の人生に影響を与えた内容もあるだろう。

だが、決してその後の人生に影響は与えるほどでもないけれど、なぜか記憶に残り続けている会話はないだろうか?

僕にはそんな、なぜか記憶に残り続けている会話がいくつかある。

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高校1年生の頃の話。もう今から30年近く前になる。

物理の非常勤講師の男性の先生がいた。

生徒からは「ルパン」というあだ名で裏では呼ばれていた。
「ルパン」の名の通り、背が高くて細身だったからだ。

ルパンは、高校教諭を目指して試験を受けては落ち続けている先生だった。

ルパンは物理の先生だったのだけど、物理の授業内容については全く記憶がない。

ただ、他の先生たちの授業と違う点があり、その会話が今でも記憶に残っている。

 

何が他の先生と違ったかというと、時々ルパンが好きなものを紹介してくれる時間があったのだ。同級生はどう思っていたのか分からないけど、僕は実はルパンの授業以外の話は結構好きだった。

 

その中でも記憶に残っているのが、好きな映画作品についてだった。

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ルパンが紹介した映画「今を生きる」

進学校に赴任した先生が型破りな方法で、生徒たちに今を生きる大切さを説く映画。
きっと、ルパンはこの「今を生きる」に出てくる先生に理想の先生姿を重ね合わせていたんだろうと思う。

いつもは淡々と物理の授業を進めるルパンが、とても熱を込めて『「今を生きる」は絶対観たほうがいい』と話している様子は鮮明に記憶に残っている。

僕は元々映画好きだったこともあって、「今を生きる」は鑑賞済だったが、当時はそこまで僕の心に刺さらなかった。だけど、大学生になり社会人になり、大人になるにつれてこの作品の素晴らしさに気づけた。作中に出てくる先生の気持ちが理解できるようになったからだ。

 

ちなみにルパンは、僕らに作品の魅力について話す中、「今を生きる」を途中までずっと「明日を生きる」と言っていた。
ルパンは、途中で自分で誤りに気付いて訂正していた。
「今」と「明日」では、この作品のメッセージが変わってしまうレベルの誤りだった。

このあたりが、もしかしたら高校教諭の試験に落ち続けてしまう要因の一つだったかもしれない。

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ルパンは僕が高校2年生に進学するときに他の学校へ転任した。
その後のルパンについては全くわからない。

無事に高校教諭の試験に合格しただろうか?

 

今でも高校時代を思い出す時には、なぜかルパンの会話を思い出す。

高校時代の授業で覚えている会話なんてほとんどない中、授業の思い出として記憶に残ってくれて感謝している。

ありがとうルパン。